冬の京都 - 京都 町なか散歩 -老舗がある街角-
1000年の都、京都。1000年以上も都として存在し続けてきた都市は、世界でも珍しい。何気ない風景、何気ない会話から京都の歴史の奥深さを感じることも多い。京都の人々は歴史あるこの地を愛し、誇りを持って伝統や文化を継承しつつ、新しいものにも物怖じせず、ふるいをかけるように洗練してきた。
どこからかふと伝わってくる優雅な香り。香はそんな京都ならではの出合いだ。御所に近い二条の、松栄堂 は風に運ばれてくるキリリとした香りでその所在がわかる香りの老舗である。創業は1705年。当主は12代目。線香、香木、匂い袋などを手がけ、初代以来、代々を経て受け継がれてきた秘法を生かしながら、新しい香りづくりにも力を注ぐ。
VJC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)が2005年行った「魅力ある日本のおみやげコンテスト」で金賞受賞した匂い袋。訪日する外国人旅行者に喜んでもらえる魅力的なおみやげを選定しようというもので、価格やデザイン、サイズなどが総合的に評価された。匂い袋は、天然香料を刻んで調合し袋に詰めたお香で、衣服に芳香を移したりして香りを楽しむ。西陣織のネクタイ生地で作られた袋はきりりとした雰囲気で男性にも合いそうだ。松栄堂各店舗ほか成田、関西、羽田空港などでも買える。
「お宅は、何代目ですか?」「12代です。」京都ではさりげなくすごい返事がかえってくる。12代というと、300年くらい前の創業か。京都には創業100年以上の老舗が数百店とある。連綿と店を守り、文化の伝統を今日に伝える、いかに努力と好運の賜物であったことだろうか。
御池駅近く、落ち着いたたたずまいの本家尾張屋 は、創業1465年。なんと今から541年前。京の老舗の中でも横綱格だ。もとは菓子商として営む傍らに作っていた蕎麦が本業となる。長く御所の御用蕎麦司もつとめ、皇室ともゆかりが深い。秋篠宮紀子妃もいらしたことがあるとか。当主は代々尾張傳左衛門を襲名する。
よく「京の薄味」といわれるが、京の味は決して薄くはない。薄いのは見た目だけであり、味にはコクがある。「やはり、京都の水があったからでしょう」現15代傳左衛門はいう。「京都の水は昆布だしがとりやすく、実にまろやかで深みのある味になるのです」。
京の食を語るのに水は欠かせない。一説によると、京都の地下には、琵琶湖と同じ、もしくはそれ以上の水量を持つ水がめがあるともいわれる。網の目のようにはりめぐらされた地下水脈と川筋が、京の味をはぐくんできた。
ここ豆政 もそう。「豆を水につける、その水がよかったんです」。御所の南、昔ながらの京都の町並みが広がる夷川通の一角に豆政はある。健康的でおいしい豆を届ける「お豆の百貨店」。店内ところ狭しと並んだ色とりどりの豆を、味見しながら選ぶことができる。創業は1884年。昔から縁起物として豆は親しまれてきた。京名物の夷川五色豆は初代が考案。緑色は木、ピンク(赤)は火、黄色は土、白色は金、茶は水を表し、大地を象徴している。
京都にはそればっかり通りが幾筋かある。豆政のある夷川通りは家具店。二条通は薬屋街。一方、寺町界隈はもともと骨董屋が多かった。静かで知性が匂う通り。お茶の一保堂、紙問屋の柿本。重厚で気品のある老舗や専門店が軒を連ねる。
柿本 の起源は遠く18世紀に遡る。当初は竹屋が軒を連ねる京都・寺町二条界隈で竹屋を営んでいた。やがて「町内みんなで竹屋をしていても知恵がない」と、1845年に紙屋を創業。紙全般を扱う問屋を長く営んできた。技に技を重ね、洗練されてきた和紙。外国人には、素材として手漉き和紙が人気だとか。レターセットや名刺用の紙など、どれも魅力的だ。
京都の町なかで老舗を訪ねる。静かな散歩コースとしてお薦めだ。
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